【激短編】ガラスの中の青
「ふぅん。だから、夢のない事ばかり言うのね。」



と、彼女はどうでもいい事の様に、視線をテーブルの上に移した。


俺がナーバスになっている時は、軽くあしらうのが一番だと言う事を熟知しているからだろう。



「ねぇ、飲んでみる?」



彼女が年甲斐もなくウキウキしながら、先程の酒瓶を指差した。



「あぁ、飲んでみれば?」



と、愛想なく返事をしながらも、俺は彼女の腰に回した腕を離そうとはしなかった。


彼女にもその腕を振り払う気はないらしく、不自由そうに手を伸ばし、酒瓶をとると、一度眺めてから蓋をあけた。


ふんわりと甘い香りが俺の所まで届く。


彼女は、酒を一口含んだ後、案の定と言うべきか、



「ジュースみたい…」



と、複雑な表情を浮かべた。


表情からも解る様な微妙さを、俺にも伝えたかったのか、



「はい。」



と、彼女は酒瓶を俺の口元まで運び、眉間に皺を寄せ拒否する俺に、半ば無理矢理、その酒を飲ませた。


鼻孔をつく甘さが全身に染み渡る様な味がする。



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