シニアトポスト
最愛の彼女が死んでから、もう何年が経っただろう。
あれから僕は大学を卒業して、一般の会社に就職した。彼女と学生時代を共にした部屋は相変わらずそのままで、毎日彼女を思い出しては少しだけ苦しくなるのも変わらないままだ。
けれど、大学生の時に比べて気持ちが軽くなったのは、きっとあのポストに出した手紙のおかげなのだと思う。
不思議なポストに出したあの手紙は、無事彼女のもとに届いただろうか。
人が行き交う交差点を過ぎ、駅への歩みを進める。今日は久々の残業で、腹の空き具合がいつもの倍だった。
何を食べようか。
彼女だったらきっとまたあの店に───…ええと、どこにあるんだっけ。
昔よく訪れた店が、確か駅の近くにあったはずなのだが、…なんだったかな。
“不思議なポスト”の名前もそこのマスターに聞いたような気もしなくないが、それもまた思い出せない。
仕事の疲れか、はたまた別の何かか。
と言えど、空腹には抗えない。場所も名前も、マスターの顔さえも思い出せないけれど、きっといつかのタイミングで思いだすことだろう。
僕は、駅内にある深夜まで営業しているラーメン屋へと急いだ。