シニアトポスト
その日以来、あたしと彼は頻繁に会うようになった。
一度の過ちから発展する恋はよくある話だ。
私たちが正式に恋人関係になるまでに、そう時間はかからなかった。
始まりはどうであれ、時間がたつにつれてあたしは彼に対して忘れかけていた感情を抱くようになった。それは彼も同じようで、年月が経つにつれてあたしたちの絆は深まり、互いを大事に思う気持ちが大きくなっていった。
あたしが「ここに行きたい」「あれが食べたい」「これがしたい」と言うと、彼は嫌な顔一つ見せず優しく微笑んで「いいよ」と言った。
あたしが「会いたい」と言うと、彼は「すぐに行く」と言って走ってあたしのもとに来てくれた。
あたしが「あたし以外に優しくしないで」と泣けば、彼は「わかった。頼むから、泣かないで」と申し訳なさそうに眉を下げた。
基本的に、春野くんはイエスマンだ。
あたしの意見を最優先にしてくれて、自分のことは後回し。
それに比べてあたしは主張が強くてわがまま。
思えば、彼はもしかしたらそんなあたしを不満に思う日もあったかもしれない。春野くんは優しいから、あたしに何も言ってこなかった。
それが良かったのか悪かったのか、確かめることはもうできない。
今になってそんなことを思ってもすべてが手遅れだ。
だって春野くんは───もう、死んだんだから。