シニアトポスト






「…、あたしのこと、忘れてないかなあ…」

「ああ。絶対、今も君のことを想っていると思う」

「ほかの男の子と付き合うの…最低、って、言うかなあ…?」

「彼がそんな人じゃないって、君が一番わかっているだろう?まあ、ヤキモチくは妬いていそうだがな」

「っ、マスター…、」





春野くん、春野くん、春野くん。


あたしは、こんなにもきみのことで頭がいっぱいです。
どこにいますか、なにをしていますか。



「…“不思議なポスト”に手紙を出したら、…死んだ人に届けてくれるって…本当かなあ…っ、?」




───きみに、言いたいことがたくさんあるんです。





「…そのポストを使う条件は、…知っているかい?」




マスターは、あたしの言葉を確認するように問いかけた。




“シニアトポスト”と呼ばれる不思議なポストの話は、どこで耳にしたんだっけ。

遠い昔にお母さんに聞いた?それともおばあちゃんが教えてくれた迷信?
…いや、春野くんから聞いた作り話だっけ。


当時の記憶は曖昧だが、人伝に聞いて(よく凝った話だなあ)と思った覚えがある。




「第三者に手紙の内容を公言しないこと、宛名を正確に詳しく書くこと。…それから、」

「ああ、それ以上は言わなくても大丈夫。君がわかっているならいいんだ」




どうやら、マスターはこの話の詳細を知っているようだ。


条件付きで、死後の世界に手紙を届けてくれる不思議なポスト。

どこにあるのかも、本当に存在するのかもわからないけれど、この喫茶店と何やら過去に思い出があるのだろうか。


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