シニアトポスト





「藍ちゃんの気持ちが軽くなるなら、私は協力するよ」

「…マスター」

「場所については昔、知人から教えてもらったことがあるから、手紙を書いたら私に預けてくれないか」




いつもマスターはあたしの心を軽くしてくれる。「ありがとう」とお礼を言うと、マスターは優しく笑った。


悩み相談も、愚痴も、友達に言うよりもマスターに言ったほうが、気持ちが晴れるのはどうしてなのだろう。この喫茶店の落ち着いた雰囲気がそうさせているのか、マスターの持つオーラが優しくて安心するからなのか。


───きっと、どちらも正解なのだと思う。




「君たちに未来がありますように」




マスターはそう言って、垂れめがちな目から一粒の涙をこぼした。



「はは、どうしてマスターが泣くのー」

「…おや。藍ちゃんと春野くんが出会えたことがうれしくて、だろうか。私ももう歳だなあ」



そう言って笑うマスターにつられてあたしも笑う。

マスターが泣いた本当の理由を、あたしが知ることはないだろう。

< 28 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop