シニアトポスト
「藍ちゃんの気持ちが軽くなるなら、私は協力するよ」
「…マスター」
「場所については昔、知人から教えてもらったことがあるから、手紙を書いたら私に預けてくれないか」
いつもマスターはあたしの心を軽くしてくれる。「ありがとう」とお礼を言うと、マスターは優しく笑った。
悩み相談も、愚痴も、友達に言うよりもマスターに言ったほうが、気持ちが晴れるのはどうしてなのだろう。この喫茶店の落ち着いた雰囲気がそうさせているのか、マスターの持つオーラが優しくて安心するからなのか。
───きっと、どちらも正解なのだと思う。
「君たちに未来がありますように」
マスターはそう言って、垂れめがちな目から一粒の涙をこぼした。
「はは、どうしてマスターが泣くのー」
「…おや。藍ちゃんと春野くんが出会えたことがうれしくて、だろうか。私ももう歳だなあ」
そう言って笑うマスターにつられてあたしも笑う。
マスターが泣いた本当の理由を、あたしが知ることはないだろう。