シニアトポスト
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「───加賀野さん」
俺を呼ぶ聞きなれた声に現実に引き戻される。声がした方に目を向けると、後輩の真壁(まかべ)がそこにはいた。「おつかれっす」と軽いあいさつをされ、「おう」と短く返す。
「どうしたんすか、ぼーっとして」
「いや、別に」
「ふーん…つか早く飯行きましょうよ」
「今日は米がいいっす!」とかいう真壁に はぁ…とため息をつき、重い身体をもち上げて席を立つ。
社会人になって数年目の俺と、今年新卒で入った真壁。
もっと俺を敬え、なんてそんなことは思わないけれど、圧倒的なコミュニケーション能力の高さと人懐っこい性格に敵わず、頻繁に飯を食いに行くような仲になっていた。
時刻は14時を回っている。
昼のピークは徐々に落ち着き始める時間だろう。
「何食う」
「米で!」
「や、米はわかったから。具材っつーか、おかず。なにがいい」
「それは加賀野さんに任せます」
この間はラーメン、そのまえはパスタ。
今日は久々に米となると…とんかつか、唐揚げか。
この近くでおいしい定食屋さんってあったっけな。