シニアトポスト
「真壁」
「なんすか」
「おまえ、駅の裏あたりにある、オムライスが美味い喫茶店知ってるか」
隣を歩く真壁にそう問いかけると、真壁は「んー」とうなり、思いだしたように口を開いた。
「“トゥモロー”のことっすか?」
「トゥモロー?」
「全部大文字のアルファベットで、“TOMORROW”。オムライスは分かんないっすけど、駅のはずれの方にあった喫茶店ならそこのことだと思いますけど」
TOMORROW。
春野がおすすめしていた喫茶店はきっとそこのことだろう。
真壁が知っているということは、有名だったのだろうか。俺も春野も地元はこの地域じゃないから知らなかったのかもしれない。春野も、藍ちゃんから教えてもらったって言っていたし。
「真壁、その店の場所わかるか?」
俺がそういうと、真壁は「ああ、もうないっすよ」と、何の感情も込められていない声で言った。
「喫茶店、ちょっと前に突然つぶれたんすよ」
「…え、そうなんだ」
「たしか、経営者が死んだとかで」
そうだったのか。
ちょっと前…か。
もっと早く存在を思い出しておけばよかった。