シニアトポスト
保坂 莉央
「…まだ死にたくない」
いつからか、私の口癖はそうだった。
いつも後ろで結わえている髪の毛は、幼い頃から続けている水泳の影響で塩素で色素が抜けた。同世代の女の子たちに比べたらだいぶ茶色みが強くて、地毛だと言っているのに、高校では何度も指導を受けた。
不可抗力であって、私のせいじゃないのにな。
理不尽に怒られる度に、私はずっとそう思っていた。
「死んだら、私はどうなっちゃうのかなぁ」
治らない病気を持っているわけではない。未来がかすむほど、人間関係にうんざりしたわけでもない。この世に終わりを告げるほど人生を諦めてもいなかった。
それでも私は、どうしてかいつも自分の命の終わりを気にせずにはいられなかった。
「どうって……、逆にどうなりたいの?莉央は」
彼が私にそう問いかけるのは何度目だろう。私は分かりやすく彼から視線を外した。答えを出せないことなんて分かっているのに、どうして聞いてしまうのだろう。
私は、もしかしたら頭のネジがいくつか飛んでいるのかもしれない。