シニアトポスト
僕の彼女は可愛い。
大学に入ってから染めたほんのり赤みがかった髪の毛は、いつも肩のあたりでゆるやかに内巻きにされてある。長いまつ毛におおきな猫目。白い肌に、小柄な身長。形の良い唇の感触は、僕だけが知っているものだ。
「翼くん」と僕を呼ぶ声は優しくて、ほんのり甘さを含んでいる。それが愛おしくてたまらない。可愛くてどうにかなってしまいそうだ。
そんな莉乃だからこそ、たとえ数分であろうとこの時間に一人で夜道を歩かせるようなことはしたくなかったのだ。けれど、可愛らしい容姿とは裏腹になかなか頑固な性格をしているのが彼女なのである。
駅で待ち合わせすることになったとはいえ、僕は気が気ではなかった。
僕の住む家から駅までは歩いて15分。走れば10分ほどでつくけれど、それでも到着は莉乃のほうが早い。
彼女に会ったら、冷え切った手を僕の体温で温めよう。
帰り道の途中にあるコンビニによって、暖かい肉まんとあんまんを買って半分こしよう。
家に帰ったら、すぐにお風呂を沸かして十分に体を温めよう。
そうしたら僕は、きみの温もりと一緒に眠りにつこう。
そんなことばかり考えながら、僕は寒空の下、鼻を赤くして僕を待つ彼女の姿を想像して夢中で走った。
ああ、早く。
早く莉乃を迎えに行かなくちゃ。