シニアトポスト
死後の世界に手紙なんて届くわけがない。
翼くんはリアリティのない話は嫌いだったはずだ。
『俺は現実主義なんですよ。莉央さんなら分かるでしょ?』
それを彼の口から聞いた時、翼くんと私に共感できる部分があって嬉しかったのだ。
昔から、信ぴょう性のない話は好きではなかった。占いや心理テストは絶対に信じない。同級生からは、「莉央ちゃんってつまんないね」と言われたこともある。
だからこそ、好きな人が現実主義だと知り、"この人とは合うかもしれない"って、私は1ミリの希望を信じてやまなかった。実際には、翼くんと私の間に運命なんてものは1ミリも存在しなかったわけだけど。
『莉乃は俺と違って夢があって……すげえ、輝いて見えるんです』
まるで、現実主義の私はくすんでぼやけていると言われているようだった。
翼くんがそんなつもりで言ったわけではないことくらい分かっていた。
それでもあの時の私にとっては、その言葉さえも私を否定する言葉に聞こえて仕方がなかった。何もかもが劣等感に襲われて、前向きな思考はとっくに死んでしまっていたのだと思う。
───けれど、今なら分かるかもしれない。
叶うか分からない夢や、占いや、迷信を信じる莉乃の気持ちが。
現実主義のくせに、現実を認めたくなくて架空のポストに頼ってしまいたくなる翼くんの気持ちが。
今の私は───輝いているだろうか。