シニアトポスト
あの日、駅についても彼女の姿を見つけられなかった僕は、彼女のスマホに電話をかけた。
けれど、何度かけても応答はなく、ただ耳元で機械音が規則正しくなり続けるだけだった。何分かその場で待ってみたものの、彼女がくる気配は感じられなかった。
不安になった僕は、駅の付近を探すことにした。僕たちがいつも待ち合わせをする場所は駅の入り口だ。もともと利用者が多い駅ではないこともあり、人通りは少なかった。
莉乃はどこに行ったんだろう。
駅の中に姿はない。トイレか?と思ったけれど、以前莉乃が「この駅のトイレってなんか怖くて入りたくないんだよね」と言っていたことを思い出し、その線はすぐになくなった。
バイト先から莉乃が歩いてきたであろう道を、彼女の身に何もないことをひたすらに祈りながら辿る。少し歩いたところで、小さな段差の境目に不自然に落ちている、見覚えのあるモノを見つけた。
嫌な予感がした。どくんどくんと心臓が音を立てる。
…いやだ、いやだ。
どうか、見間違いであってくれ。そう思いながら、そこに落ちているモノに恐る恐る近づく。
────そして、僕は言葉を失った。
そこに落ちていたのは、僕とお揃いのカバーを付けた彼女のスマホだった。
なんで莉乃のスマホがここに落ちているのか。
どうして彼女の姿が見えないのか。
考えられる可能性は、どれも悪いものばかりだった。震える手と動揺する気持ちを必死に抑え、僕はスマホを取り出して警察に電話をしたのだった。