シニアトポスト
「…え、」
「…君は、素直で良い子だなぁ…君たち双子は、…よく似ている」
莉乃を思い出すようにつぶやいたマスターの言葉が、何故か私の胸を締め付けた。
「自分宛てに手紙を届けるなんて、考えもしなかったよ」
「…マスター、」
「…手紙を書いた相手のことを忘れたという話は聞いたことがないんだ。記憶が消えるのは、思い出と私のことだから」
「っ、じゃあ、」
「でも、保証はない。宛先が私だとしても、ポストの管理人が私であることもまた事実だ」
マスターが涙をぬぐい、ふぅ…とひとつ息を吐く。何かから吹っ切れたような、そんな表情のマスターと目が合った。
「莉央ちゃんが書いてくれた手紙は、莉央ちゃんがもし私を忘れても一生宝物にするさ」
「…それって、」
マスターがゆっくりと頷いた。
「───…試してみるかい?」
2杯目の珈琲もまた、すっかり冷めてしまっていた。