最後の一夜が授けた奇跡
「申し訳ありません、すぐにお紅茶をお持ちいたしますので」と女性にひと言断り、私は律樹の前にコーヒーを出した。

少し震えている手が律樹にどうか気づかれませんようにと願いながら。

律樹の前にコーヒーを置き、私はお客様に頭を下げてその場から離れた。

社長室の扉を開けて、秘書室に入り大きく深呼吸をする。


律樹の声を聞くだけで。

律樹の視線を感じるだけで。

全身が叫ぶように震えだす。


まだ好きだと。
愛していると。
離れたくないと。
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