最後の一夜が授けた奇跡
「そうか?」
「うん。休みながら無理しないようにしてるし。体調も安定してきてるから。」
「ならいいけど。無理だけはするなよ?」
「うん」
まだ心配そうな律樹の顔に私は微笑みながらもう一度繰り返す。

「大丈夫」と。

「お風呂掃除して着替えてくる。」
「うん」
律樹はそう言って私に軽くキスをして浴室へ向かった。

少しくらい無理してでも早く体調を安定させないと。

いつまでも理事長が待ってくれるとはわからない。
むしろ律樹に無理難題を押し付けてきっと律樹が叶えられないだろうと思っていたであろう理事長を待たせるなんて、本当ならしたくない。

本心を隠しながら律樹に余計な心配をかけないように私は気を付けた。
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