最後の一夜が授けた奇跡
食事を終えると律樹がすぐにキッチンで洗い物を始めようとする。
「いいよ。私がするから。」
「いいから。季里は座ってろ。」
「大丈夫。律樹は仕事忙しいんだから私にさせて?」
私の言葉に律樹が私の両腕をつかんで顔を覗き込むように視線を合わせた。

「季里」
「ん?」
「ちょっとペースダウンしないと、倒れるぞ?」
「大丈夫だって。」
私の言葉に律樹は何も言わないまま、私の目を見つめ続ける。

沈黙する私たち。

でも律樹と合う視線からいろいろな律樹の言いたいことが伝わってくる。

「・・ちょっ・・・」
「ん?」
急に襲われた吐き気に私は律樹の手を振り払うようにしてトイレに駆け込んだ。
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