最後の一夜が授けた奇跡
トイレで胃の中のものをすべて吐き出す。

「季里、大丈夫か?」
扉の向こうで心配そうな声の律樹。

何とか立ち上がりトイレの扉を開けると律樹がすぐに支えてくれる。

足がふわふわと浮いているような感覚。

浴室で口をすすいで、律樹に支えられながら私はベッドに向かう。

「水、飲むか?」
「・・・うん」

まだ続いている吐き気をこらえようと私は目を閉じる。

「ほら」
律樹に背中を支えられながら私は少しだけ水を飲んだ。
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