最後の一夜が授けた奇跡
「なんか、熱くないか?」
「・・え?」
律樹が私の額に触れて真剣な顔をしている。

私の部屋のどこに何があるのかをすべて知っている律樹がすぐに体温計を手にしてベッドに戻る。

自覚症状が全くない私。

律樹に体温を測られながらも熱なんてきっとないと思っていたのに、『ピピっ』となった体温計を覗き込んで驚いた。

『38.3度』

「あれ?」
「ばか。だから無理すんなって言っただろ」
眉間にしわを寄せている律樹。
体温を見た律樹はすぐに携帯電話を手にして、私の通っている産婦人科に電話をしてくれた。

私の体調を伝えて指示を仰いでいる。
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