最後の一夜が授けた奇跡
「なんで律樹がそんな顔するのよ」
そっと手を伸ばして律樹の頬に触れる。
律樹は私の手の上から自分の手を重ねた。

「理事長に挨拶行くこと考えて、焦ったんだろ?それに俺が早く季里と籍を入れたいとか言ったから。」
律樹に私は首を横に振る。
「私がそうしたかったの・・・。」
私の言葉に律樹はふっと笑う。

「うれしいけどさ、今はこの子が一番だ。」
「・・・」
「季里一人の体じゃない。今はこの子が一番なんだよ。」
「・・・・」
私は焦りすぎて、自分の体に、お腹の子のサインに気づけていなかったことに気が付いた。

「まだ退院して間もないんだ。この子の命が危なかったんだぞ?まだ、用心して、用心しすぎくらいでちょうどいいんだ。」
「・・・」
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