最後の一夜が授けた奇跡
私たちの足元はまだまだ不安定だ。

だからこそ私は焦りすぎていることに気が付いた。

「季里」
「ん?」
「引っ越すか」
「え?」
「本当は俺、デパートの上じゃなく、ほかの場所に季里との家を建てようって考えてた。」
律樹が私の手を握る。
「あそこにいれば、季里が大変な思いをするかもしれないって思って、なるべく近付けたくないとすら思ってたんだ。俺。」
「・・・・」
「でも、季里は俺と一緒に、俺の運命を背負おうとしてくれてんだよな。」
穏やかに微笑む律樹。

「俺のそばで、俺の背負っている物、一緒に背負おうとしてくれてんだよな。」
「・・・」
言葉にしなくても律樹はいつだって私の考えていることをわかってしまう。
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