最後の一夜が授けた奇跡

「入らない・・・」
「ん？」
私は理事長に挨拶に行く日を翌日に控えて、何を着て行こうかクローゼットの前で悩んでいた。

最近急にお腹が出てきてしまった。

それまで着られていたスーツが着られない。

「これだとラフすぎるかな・・」
「大丈夫だろ。」
ワンピースタイプのスーツくらいしかもう入らない。

お腹をさすりながら、何なら着られるか悩んでいると、そんな私のことを後ろから抱きしめる律樹。後ろからまわされた手が私のお腹に触れる。
「大きくなってきたな」
「うん」
「なんだっていいだろ。裸じゃなければ。」
「何言ってんのよ。」
緊張している私をなだめるように律樹が冗談を言う。