最後の一夜が授けた奇跡
私の緊張を知っている律樹は私の方を見て、穏やかに微笑みながら私の手をギュッと握ってくれた。

昨日結局眠れなかった私。
朝から支度がうまくいかなくて、少し律樹に八つ当たりすらしてしまった。

それでも律樹は私の気持ちをよくわかってくれていて、穏やかに準備を手伝ってくれたり、家事を進めてくれた。

何とか着られるワンピースを見つけたのに、それにあう靴がヒールの靴しかなくて、ローヒールの靴は足がむくんで入らなくて、ぐずぐずする私に、律樹は近くの靴屋に行って完璧な靴まで買ってきてくれた。

「大丈夫。そばにいるから」
その言葉を私は胸に刻みながら大きく深呼吸をして、律樹に頷いた。

「よし。」
律樹は私の手をギュッと握ったまま社長室の扉をノックして中に入った。
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