最後の一夜が授けた奇跡
「彼女はもう秘書ではありません。」
ぴしゃりという律樹を私は見る。
「いいから。」
小さな声で律樹に言っても律樹は私の手を離さない。

「別に秘書とかどうとか考えていない。ただお茶がのみたいだけだ。」
「すぐ淹れてきます」
私は律樹の手を半ば強引にはなして社長室から出た。

久しぶりに給湯室へ向かいお湯を沸かす。

2人の好みの飲み物も覚えている。

お湯が沸くまでの間、私は深呼吸を繰り返した。



お茶を淹れてから私は社長室の扉をノックした。
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