最後の一夜が授けた奇跡
「この【ASAKAWA】は、ここまで来るのにかなり苦労した。それはわかっていると思うが。」
理事長が話し出す。
「何度も経営の危機を乗り越えてここまできた。」
「知っています」
「いや、お前はまだ知らん。」
理事長が鋭い目で律樹を見る。

「まだお前が経験していないような試練がこれからどんどんとお前に襲ってくる。」
実際に何十年も社長として経営してきた理事長の話にはかなり現実味があり、ぴりっと空気がさらに緊張した。

「私も何度も危機に立たされた。それでも何とかここまで守ってきたんだ。」
「・・・」
理事長はゆっくりともう一口お茶を飲んだ。

「生半可な気持ちでは社長は務まらん。」
「はい」
「この数か月のお前の努力は認める。」
「ありがとうございます」
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