最後の一夜が授けた奇跡
「社会の流れ、経済の流れ、思わぬ出来事、いろいろな試練がいつどこから襲ってくるわからない世の中だ。まだ一度もちゃんとした試練を迎えていないお前には本当の大変さはわかっていない。あくまで想像の世界で、非現実的な世界と現実は違う。精神的な負担も違う。」
「・・・・」
理事長の言葉は図星で、律樹も思わずだまる。

「石川財閥にはすでに今回の情報はまわっている。」
私は病室に石川財閥の令嬢が来たことを思い出した。

「でも向こうは、あくまで今起きている事態だけを知っていて、律樹が破談にしようとしていることは知らん。」
「どういうことですか?」
「石川財閥の現会長も社長も、愛人がごまんといる。」
その言葉だけで意味が分かる。

石川財閥は律樹は私を愛人にして、結婚をする方向もあると考えているのだろう。

「どんな手を使ってくるかわからんぞ。お前の私的な感情で【ASAKAWA】を危機に陥らせることはできん。今まで長年守ってきた私には、今のお前に全面的に【ASAKAWA】を任せることも、委ねることもできん」
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