最後の一夜が授けた奇跡
「言い出したらきかない性格はお前の母親そっくりだ。」
理事長は半ばあきらめたようにため息をつき、私に視線を移した。

「息子に跡を継いでもらうことが親にとってどういう気持ちか、今の君にならわかるんじゃないかね」
「・・・」
「それがかなわないかもしれない。」
「・・・」
私は思わずうつむく。

隣から律樹が口を出そうとすると理事長がすかさず律樹を止めた。

そして言葉を続ける。

「それでも、息子と一緒にいたいか?」
「・・・・はい・・・申し訳ありません・・・」
もう迷わない。そう決めた。
律樹が何度もあきらめないと言って努力をしてきてくれたことを無駄にはできない。

それに何より、私が離れたくない。
< 230 / 500 >

この作品をシェア

pagetop