最後の一夜が授けた奇跡
先に荷物を積んだトラックが律樹の部屋に出発したのを見送り、私は律樹の車で向かうことになっていた。

「ちょっと待って」
私は部屋を出ようとしている律樹に声をかけて、自分の部屋の方を振り返った。

この部屋にたくさんの思い出が詰まっている。

どの思い出にも律樹がいる。

一緒に過ごしたこの部屋。

たくさんの思い出が一気に蘇る。

「いろいろあったな。この部屋で。」
「うん」
立ち止まる私の手を律樹がそっと握る。

律樹は私の手を握ったまま、私が前に歩き出すのを待ってくれた。
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