最後の一夜が授けた奇跡
律樹の部屋に入る前に私は立ち止まった。


この部屋に入るのは・・・あの夜以来だ。


さようならを心に決めていたあの夜。


最後だからとぬくもりを分け合いながらも、切なさとやるせなさでいっぱいだった気持ちを思い出す。


「季里」
完全に足を止めた私の背中を律樹がそっと支えてくれる。

「今日からよろしくな」
「うん」
「新しいはじまりだ」
「うん」
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