最後の一夜が授けた奇跡
「どうした?」
「エレベーターだけ通電が弱いらしくモニターがうつらないようです。もしかしたら非常用の電話もつながっていないかもしれません。」
もしも中に人がいたとしたら、外部との連絡が取れず不安な思いをさせているかもしれない。
一番はけがや体調を崩している可能性もある。

「管理会社に至急連絡してくれ」
「はい。警備室の職員も今現場に確認に向かうようです。」
俺は秘書の報告を聞いて判断をした。

非常電源で大丈夫な状況とはいえ、ほかのエレベーターにも不具合が起きる可能性もある。

お客様を危険な目には合わせられない。

「今すぐアナウンスを流して。臨時でデパートを閉める。なるべく階段のご使用が可能なお客様には階段のご利用を呼び掛けて、社員たちはすぐに緊急時の配置につくように指示を。」
非常時の訓練は年に数回訓練をしている。

その際、停電でエレベーターが使えなくなった時の訓練もしていて、社員たちはそれぞれ階段や扉、フロアの避難経路の誘導をする持ち場を決めている。
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