最後の一夜が授けた奇跡
『お前がしっかりしなくてどうする。父親になるんだろう。しっかりしろ。』
親父はそうはっきりと告げると言葉を付け足した。

『デパートのことは任せなさい。』と。

俺は頭を下げながら「ありがとうございます」と更に震える声で言った。



一気に自分の不甲斐なさも、緊張も、恐怖も、あふれ出す。


泣きそうになるのをこらえながら俺は頭を下げ続けた。



『家族を持つということはこういうことだ。頑張れよ。』
初めて理事長にかけられた、父親らしい言葉に、俺は熱くなる目頭を押さえた。
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