最後の一夜が授けた奇跡
「奥様の状態は現在部分胎盤剥離という状態です。多分外傷性のショックで剥離がおきたと思われます。」
私は病室で律樹と一緒に医師から現状の説明を受けることになった。

「ただ、剥離している胎盤の位置がまだ赤ちゃんをお腹にとどまらせることができる位置だったことと、対応が早かったため剥離を止めることができています。今は出血がまだ止まっていません。この後、緊急で帝王切開やお産になることもあります。」
私は医師の言葉に不安になり、私の横に寄り添うように立っている律樹に手を伸ばした。
律樹はすぐに私に近づき、私の手を握ってくれている。

意識が戻った時よりも少しは体の動く部分が増えている。
「今後は入院しながら経過を見て対応を考えて過ごします。」

「赤ちゃんは・・・元気なんですか?」

声を絞りだして私が聞くと医師は深刻な顔から少し表情をほぐした。

「あとでエコーで見てみましょうか。元気に動いていますよ。ただ、お母さんの体が今貧血状態なので少し苦しいかもしれません。念のため機械を使ってお母さんの酸素治療を行い、お腹の赤ちゃんが苦しくないようにしましょうね。」


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