最後の一夜が授けた奇跡
その声の方に視線を向ける。

そこには目を真っ赤にした律樹がいた。

「季里・・・」
静かに発せられるその声が大きく震えている。

「・・・」
私は律樹の名前を呼ぼうとしたのに、言葉が出ない。
口の中が乾燥してからからに乾いている。

「水、飲むか?」
その言葉に頷くと律樹は私の体を少し起こして、背中を支えながら口に飲み物を運んでくれた。

口の中が潤い言葉が発せられるようになった私はすぐに律樹に言う。

「赤ちゃん・・・は?」
その答えを聞くことが怖い。
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