最後の一夜が授けた奇跡
私たちの間にはいつか来る”別れ”がいつも見えていた。

その日が・・とうとうやってきたのだ。


私はこの夜が最後の夜だと決めている。

だから今夜だけはわがままに・・・
運命から背けて律樹と一緒にいると決めている。

「季里がいてくれたから俺はここにいられるんだ。季里が居なかったら、俺、自分の運命から逃げてたと思う。」
「私は何もしてないよ。律樹ががんばったからでしょ」

社長の息子として会社に入った時、律樹は社員からかなり冷たい視線を送られた。
中には将来を見据えて律樹にとりいろうとする目をした社員もいた。

周囲の人からの目に、律樹がつらい思いをしてきたのは入社する前からずっと続いていた。
< 5 / 500 >

この作品をシェア

pagetop