最後の一夜が授けた奇跡
「それじゃあだめなんだ。俺は自分の運命をちゃんと背負って、歩けるような強い人間になる。」
「・・・」
「待っていてくれなんて言わない。そんな言葉で季里を俺の運命に縛りつけられない。」
律樹の表情には強い覚悟がにじみ出ている。
「でも、俺はあきらめない」
不安そうに、切なく揺れていた律樹の瞳が今は全く揺れていない。

「今までいろいろあきらめて来たけど、手放してきたけど、でも、俺、季里だけはあきらめない。絶対にあきらめない。」
「律樹・・・」
「ほかのことはなんだってあきらめる。必要なら手放す。でも、季里だけはあきらめない。絶対に。季里と一緒にいる未来だけは、諦めたくないんだよ。」
「・・・」
我慢していた涙があふれる。

私の瞳から涙があふれ出したのを見て、律樹は私の体をそっと抱きしめた。

「愛してる。この気持ちはこれからもずっと変わらない。」
抱きしめながら言葉を続ける律樹。
私の全身に律樹の声が響いてくる。
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