最後の一夜が授けた奇跡
「辛い思いさせてごめん。何回も謝らせて、ごめん。」
涙で言い返せない分私は首を横に振る。

「季里、愛してる。俺、季里とのこと、諦めないから。」
「・・・っ・・」
「だからちゃんと食べて、ちゃんと寝て、ちゃんと・・・自分のことを守っていてほしい。少しだけ・・・少しだけ・・・・俺、一緒にいてやれないからさ。」
少し震える律樹の声。

一緒にいた時間。長い長い時間。
いつも律樹は私を守ってくれた。
支えてくれた。
そばにいてくれた。

そんな温かい思い出がよみがえる。

私は何とか自分の涙をのみこんで、律樹から体を離す。
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