最後の一夜が授けた奇跡
「その言葉だけでっ・・・十分だよ・・・。十分なんだよ・・・・律樹。」
これから律樹が立ち向かうものの大きさを私は知っている。
だって今までずっと一緒にいたんだから。

「律樹・・・十分だよ・・・」
何度もそう繰り返す。

あなたが私をあきらめないと言ってくれた言葉に、大きな愛を感じられたから。
私と一緒の運命をつかむために、大きな覚悟を決めてくれているとわかったから。

両手で律樹の頬を包むように触れる。

「もう、十分。もう・・・」
言いかけた言葉を遮るように律樹はもう一度私の体を抱き寄せた。

きっと私にそれ以上の言葉を言わせないために。
強く抱きしめてくれる律樹。


律樹のその気持ちだけで、十分だよ。
今までの幸せすぎる時間だけで、十分だよ。
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