最後の一夜が授けた奇跡
「おはようございます」
朝から私と女性の上司、女性の後輩の3人は別室にてこの日に行われる会食の打ち合わせをした。

「今日の料理は先方の指定でイタリアン料理になってるから、シェフが出張してきます。」
上司の話を聞きながら私はメモをとる。
「会食の一時間前に理事長がお見えになって、会食の30分前にシェフが到着する予定です。泉崎さんは理事長の対応でお願いします。」
「はい」
律樹のお父さんのことを私はよく知っている。
会社でも何度かすれ違ったこともある。
でも、その度に律樹と私のことがばれているのではないかと緊張してしまう。

別れた今は堂々とできるのに、それでもまだ悪いことをしているような気になってしまう。

打ち合わせが終わり時計を見るとすでに理事長の到着する時間まで15分を切っていた。

私は給湯室に向かい、お湯を沸かす。
理事長は濃い緑茶が好みだとリサーチ済みだ。
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