最後の一夜が授けた奇跡
その手をつかみ、私は首を横に振った。
そして、精一杯の微笑みを向ける。

こんな最後なの・・・。
こんなボロボロな終わりになってしまうの・・・。

ごめんね・・・。

私はつかんだ律樹の手をそっと自分の体から離して、背を向けて歩き出した。

「律樹、早く支度をしなさい。」
理事長の声が聞こえてくる。

私は振り返らずに、社長室から出た。

きっと社長室から聞こえてくる大きな声に、秘書室にいた社員もほとんど察していたのだろう。

「申し訳ありません」
私は秘書室の社員たちに頭を下げた。
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