ブラインドネス・シンドローム
その安心感に身を委ねつつ、私は一番聞きたかったことを口にする。
「その、ブラインドネス・シンドロームって、ニュースとかでたまにやってるあの病気で間違いないですか?」
ふとした時に見るニュース番組で特集として取り上げられる、ブラインドネス・シンドローム。
こんな病気もあるんだ、なんて軽い気持ちで眺めていただけだからどのようなことで発症して、どのような治療をしていくのかサッパリ分からない。
私の問いかけに、書いていた手を止めて先生は説明をし始める。
「ブラインドネス・シンドロームは、まだ世界でも発症数の少ない難病の一つ。専門機関もなくまだ研究途中にある病気で、その患者によって発症条件がガラリと変わってくる不思議な病なんだ」
「条件が違う?」
「仮に肺癌だとしよう。喫煙者はもちろんのことながは肺癌になるリスクはかなり大きくなる。それに男女比を比べると男性の方が発生する確率が高い……とまあ、条件が揃った方が発症しやすくなる、のは分かる?」
「はい」
「しかしブラインドネス・シンドロームに関しては、同じ目が見えないという状態は同じでも、その患者個人によって全く発症する条件が違うんだ」
私がなっているこの目が見えない状態になったのは、私だけが何か引き金を引いたかのように発症してしまった、ということ。
それに難病という言葉に何かが重たく伸し掛るかのように、まとわりついた感覚に襲われる。
「僕の受け持った患者の中の例でいけば、純粋なストレスからくるものもあれば、焦りという感情だけで視神経が損傷を受けている場合もあったりと様々だ」
「感情だけで……?」
「そう。面白い病気だろう。特効薬なんかは存在しない、その人自身で抱えている何かを紐解けば治るんだ」
つまり、私自身で抱える何かを見つければ自ずと完治するということになる。
あまりにも単純すぎる自分の抱えている病気は、すぐ簡単に治るのかもしれない。