ブラインドネス・シンドローム
まるで子供が準備された朝食を待っているようなそんな気分に、恥ずかしさが込み上げた。
「はい。千鶴さんから見て三時の方にご飯、九時の方にお味噌汁、十二時の方に焼き鮭が置いてあるよ」
ベッドの横に置かれたであろう朝食に向かって私は両手を合わせる。
普段なら手抜き三昧の私の朝ごはんから考えたら豪華としか言えない朝食に、感謝の気持ちを最大限に込めていただきますと食事前の挨拶を済ませる。
渡された箸を手に取り、言われた通り三時の方にあるご飯を手にした。
熱々のご飯がよそられたお茶碗の感覚を頼りに箸でご飯を掴んで、口の中に入れた。
「美味しい……」
お米の甘みとねっとりとした食感が口いっぱいに広がって、優しい気持ちになる。
焼き鮭も食べようとしたけれどお皿の位置が分からずにいた私に先生はすかさず手を貸してくれた。
「ご飯のお茶碗の中に少量入れるね」
「すみません、お願いします」
「あ、汁物はマグカップに入れてあるから飲む時言ってね」
「はい」
手際よく動いてくれた先生のお陰で私は朝ごはんを食べることができ、食べ終わった頃にはお腹は十分に満たされていた。