ブラインドネス・シンドローム
これを終わらせて終電には乗って帰らなければ、会社に泊まり込みということになってしまう。
それだけは阻止しなければと時間を管理しながらやろうと決めたその時、微かに視界がぼやける。
疲れが出始めたのだろうかと思うものの、まだ私はやれると目薬をさし一つだけ目を閉じて、目尻から流れていく液体を肌に感じ気合いを入れ直す。
ティッシュで目薬を拭き取って閉じていた目を開けて画面を見つめた、つもりだった。
「あれ……?」
本来ならクリアになっていくはずの視界が益々曇っていき、慌てて目を擦るが何ら変わらない。
「見えにくいなあ」
どれだけ顔をパソコンの画面に近づけてもピントが合うことはなく、私はとりあえず保存だけかけて背もたれに体重を預けた。
疲れてはいるが怒涛の日々に比べれば大したことはないというのに、どうしたのだろうか。
仰いで見る天井もやはりぼやけて見えて、ここは一つ折れるしかないと慣れた手つきでパソコンの電源を切った。
「仕方ない、明日朝一で来て終わらせるしかないよね」
今のこの状況で仕事を進めたとしても、ほぼ確実に終わらない未来が見える。
だったらここは家に帰って体を休めて、朝一で終わらせれば結果オーライだと自分に言い聞かせて手の感覚だけで鞄を掴み、私も上司の後を追うかのように会社の玄関を目指し始める。