ブラインドネス・シンドローム
その都度全身の体温が上がるのはこの病気のせいなのかも分からないことが、少々不安だ。
ただそれを直接先生本人に言うのも恥ずかしい話で、言えない状態がここ最近続いている。
首周りの筋肉の緊張はあまり良くないという先生がマッサージをしてくれる時に触れられるのも、今は何故かくすぐったくてでもずっと触れていてほしいと思う。
先生の長い指が私の肌を撫でるその感覚に蕩けてしまいそうな、感じたこともないその感覚に溺れそうになる。
「はい、今度はゆっくり目を開けてみようか」
目を閉じたまま生活するよう言われた私は、常日頃から目を閉じたまま目に刺激がいかないようにして生活している。
目を開けて見えた景色に絶望するのも、もう慣れてしまったこと。
今日もやっぱり何も見えない、寧ろぼやけていた私の世界は真っ黒に染まっていっている。
「見える?」
「いえ、何も」
「焦ることはないから、ゆっくり、ね」
はい、小さくと返答して再び目を閉じて私だけの暗闇の世界が広がる。
いつまでこの世界が広がって見えるのだろうか、本来の世界がもう思い出せなくなりつつある。
それが少しだけ怖くなるのと同時に、早く先生がどんな顔なのかを見てみたくてそれだけを楽しみに生きている自分がいる。