ブラインドネス・シンドローム
やはりこの繁華街は来ては行けないと前に後輩に言われたのは正しかった、なんて今更どうでもいい事を思い出す。
そんな後輩はきっと、どこの誰かも知らない男と朝まで寝たのだろうが。
残業までして、突然目が見えなくなっている私にこんな仕打ちは流石に酷すぎるのではないだろうか。
でも……誰かに認められていない私はまだまだ足りないものがあるのも事実で、それがこんな結末で自分に帰ってくるというのは、中々に来るものがある。
訪れるであろう痛みを想像して、私は下唇を噛み締めた。
「彼女に手を出さないでもらおうか」
見知らぬ男性の声が聞こえたかと思えば、ふわりと優しく私を包み込んだ。
「んだよ、てめぇ」
「何って、この子の連れだけど」
「はあ?」
「仕事が遅くなるって言って中々帰ってこないから、迎えに来たんだ。仕事で失敗したからってこんな場所でやさぐれる必要もなかっただろうに」
ね?と耳元で囁かれこれは演技に乗るしかないと、黙ったまま二度三度頭を縦に振った。
私に絡んできた男性は舌打ちを一つこちらに投げてきたが、それ以上絡んで来ることはなく足音だけが遠ざかって行った。