七色の魔法使い~冬に溶けた涙~
「……」

僕は無言で人集りに指を指した。それを見た輝一は「……でも!」と僕の手を振り払おうとする。

「ここで戦ったら、怪我人が増えるだけ。僕らが妖魔を誘導するんだ。この先に広い場所がある」

僕の言葉に、輝一は僕を見つめた。

「……でも、どうやって誘導しようか……」

僕は、そう呟くと妖魔を誘導する方法を考える。

――妖魔は、魔力を餌に生きています。そのためなのか、暴走した妖魔は人間よりも魔力を持つ魔法使いを襲う傾向があります。

不意にアイビーの言葉を思い出して、僕は「……そうだ」と輝一を掴んでた手を離した。

「……輝一。走るよ……ついてきて!」

そう言って、僕は走り出す。妖魔の近くを通ると、妖魔は『魔力を持つ人間か……』と呟いて僕に殴りかかってきた。

動きがすごい遅いから、妖魔の攻撃を避けるのは簡単。だけど、食らったらダメージは大きいだろうな……。

「……てか、この妖魔……喋るのか!?」

輝一の言葉に、僕は後ろを向く。

……言われてみれば、今まで戦ってきた妖魔は獣みたいに鳴くだけで、喋ってるのを聞いたことない……。

「こいつ……人間と同じだけの知能を持っている……のか?」

『……残念だったな、人間。俺は、人間以上の知能を持っている!』
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