七色の魔法使い~冬に溶けた涙~
妖魔はそう呟いて、いつの間にか手に持っていた巨大な剣を振り上げる。

「……冬都、逃げるよ!」

そう言って輝一は走り出した。でも、僕は動かない。このまま妖魔の攻撃を受けて消えてしまった方が、楽なのかもしれない。僕は、誰にも必要とされてないから……。

「……早く逃げるぞ!冬都!!」

輝一は、僕の腕を掴んで走ろうとするけど、僕はその手を振り払う。

「輝一だけ逃げなよ。僕に構うな」

僕は、輝一の背中を強く押した。次の瞬間、僕と輝一の間に大きなトラックが止まる。そこから降りて来た運転手は、倒れている女性に向かって走り始めた。

「……」

僕が妖魔の方を向くと、妖魔は僕に向かって剣を振り下ろしている。僕は固く目を閉じた。

「…………あれ」

どれだけ待っても衝撃が来なかったから、僕は目を開ける。

「……アイビー、大智……」

魔法で大きな盾を作り出して、それで妖魔の攻撃を受け止めているアイビーと、大智が背丈ぐらいある杖を握り締めて立っていた。

「……冬都。あなたは、何でも1人で抱え込みすぎです」

「少しは、僕たちを頼ってよ。仲間でしょ?」

妖魔の攻撃を弾き返したアイビーは、トラックを飛び越えて姿を消す。

「……冬都も行くよ」
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