翠玉の監察医 零度の教室
「……」

圭介が言葉を失っているうちに、碧子たちも準備を終えて解剖室に入ってくる。そして冷たい台の上に誠の遺体が置かれた。

「まだ中学生ですよね。これから楽しいこと、たくさんあったんだろうな」

アーサーがそう言い、マルティンが「今は自分の感情に浸る時間じゃないだろ」と注意する。ゼルダも「そうよ」と言い、アーサーは口を閉じた。

「これより、解剖を行いたいと思います。黙祷」

目を閉じ、それぞれが亡くなった誠に対して心の中で想いを口にする。目を開けた蘭は医療用ガウンの上から胸元に触れる。ブローチの感触を確かめ、蘭は小さな声で呟いた。

「法医学の、希望に……」

体にメスを入れる前に、蘭たちは遺体を観察することになった。遺体の首には首を絞め続けていたロープのあとが赤黒い線となって残っている。

「顔面蒼白、首に引っ掻き傷がない。他殺の線は薄いな」

マルティンがそう言い、蘭と碧子など監察医は頷く。圭介が首を傾げているので、蘭が説明した。
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