翠玉の監察医 零度の教室
「首つりの場合、首に自分の体重が一気にかかるので、椎骨動脈が圧迫されて頭部への血流が止まるため、顔面が蒼白になるんです。しかし何者かに首を絞められた場合、被害者は紐や犯人の手を解こうと抵抗し、首に傷が付いたりします」

「な、なるほど……」

「あとは首に残った紐のあとが自殺の場合は線状に、他殺の場合は斜めになるってことかな」

碧子がそう言い、メスを手に取る。これから誠の体にメスが入っていくのだ。

「胃の内容物、取り出します」

「心臓の血液量はーーー」

順調に解剖は進み、死因は窒息死だと判明した。

解剖が終わり、誠の遺体を専用の冷凍庫にしまった後、蘭たちはデスクに戻ってコーヒーを飲む。解剖は神経を使うため、疲れてしまうのだ。

「しかし、自殺の原因はやはり解剖だけではわからないな」

マルティンがそう言い、アーサーも頷く。碧子は「どうしましょうか……」と蘭たちを見つめる。蘭はゆっくりと立ち上がった。
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