翠玉の監察医 零度の教室
「神楽さん、待ってください!」
教室を出て中庭を歩く蘭に圭介が声をかける。蘭は「申し訳ありません。考えごとをしていました」と謝る。
「考えごと?」
首を傾げる圭介に蘭は自分が推測したことを話す。
「誠さんの自殺した原因は、おそらくいじめによるものだと思います」
「いじめ?」
「思い出してください。誠さんの机や教科書は使った痕跡がないほど綺麗でした。何故あんなに綺麗な机と教科書なんでしょうか?不自然すぎます」
「確かに……。でも、それだけじゃ証拠にはなりませんよ」
圭介の言葉に蘭は俯く。確かにそれだけではいじめられていたという証拠にはならない。誤魔化されて終わりだ。
「せめて遺書があれば話は別ですけどね」
圭介がそう言った刹那、「あっ!いたいた〜!」と言いながら教室でゲラゲラ笑っていた三人が姿を見せる。蘭は「あなた方は先ほどの……」と呟き、三人のうちの一人が「あっ、名前言ってなかったよな」と笑いながら言った。