翠玉の監察医 零度の教室
「い、いえ……。誠は成績もいい方でしたし、行きたいと言っている高校も誠の成績なら問題なく合格できると面談でも言われたんです。将来のことも二人で話していましたし……」
「二人で?」
蘭の問いに正人はかばんからまた写真を取り出す。大きなお腹を愛おしげに撫でる妊婦の写真だった。
「妻は誠を出産した時に亡くなったんです。妻か子ども、どちらかの命を諦めなければならないと選択を迫られて、僕は誠の命を選びました」
だからこそ誠が幸せになれるようにしたかった、そう言い正人は瞳を潤ませる。蘭は一瞬手をブローチに当て、質問を続けた。
「誠さんは学校について何か話していましたか?例えばご友人のことなどを……」
「そういえば、勉強のことはどんなことをしているなどは聞いていましたが、友達の話などは三年間で聞いたことがないですね。夏休みなどもずっと家にいましたし」
正人はそう言い、蘭は「ありがとうございます」と言い正人を見つめる。圭介は、無表情に見えるその目の奥に確かな感情があるのだと感じ取った。
「二人で?」
蘭の問いに正人はかばんからまた写真を取り出す。大きなお腹を愛おしげに撫でる妊婦の写真だった。
「妻は誠を出産した時に亡くなったんです。妻か子ども、どちらかの命を諦めなければならないと選択を迫られて、僕は誠の命を選びました」
だからこそ誠が幸せになれるようにしたかった、そう言い正人は瞳を潤ませる。蘭は一瞬手をブローチに当て、質問を続けた。
「誠さんは学校について何か話していましたか?例えばご友人のことなどを……」
「そういえば、勉強のことはどんなことをしているなどは聞いていましたが、友達の話などは三年間で聞いたことがないですね。夏休みなどもずっと家にいましたし」
正人はそう言い、蘭は「ありがとうございます」と言い正人を見つめる。圭介は、無表情に見えるその目の奥に確かな感情があるのだと感じ取った。