君中毒-Another Stories-
「―…おい。」
その場に座り込んでいたゆいにかかる影が無くなった。
誰かの声。
みんなの影。
ゆいの腕。
俯いていたゆいの頭を、誰かが撫でる。
「…もう、大丈夫だよ。」
その声に、ゆいはそっと顔を上げると……
もう、周りにオタクさんたちはいなくなっていて。
代わりに、目の前にいたのは…スーツ姿のかっこいい男の人。
その前後左右でオタクさんたちが1歩、ゆいから距離を空けるようにして見ていた。
「はい、解散。」
男の人が、パンパンと手を叩く。
「…え、でも…」
「ミユちゃんのコスプレ撮影会なんじゃ…」
オタクさんたちの渋る声。
…ミユちゃん?
…コスプレ撮影会?
ゆいはミユちゃんって名前じゃないのに…
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