小動物な後輩君の愛が深すぎる
女装姿を極力見られないように、透瑠くんは小走りで校舎に入っていった。
すごく似合ってたのにもったいないなー。でもしょうがないか。
怜也くんはあの姿のまま回ってるのかな。
だとしたらめちゃめちゃ注目浴びてそう。
あれこれ考えながら、校舎の出入口付近で透瑠くんを待つ。
すると──。
「青石さん……?」
恐る恐る名前を呼ぶ声が聞こえ、顔を向ける。
その先には、同い年ぐらいのロングヘアの女の子がこちらの様子をうかがっていた。
「清花さーん、お待たせしましたー。あれ? お友達ですか?」
「あっ、ううん。行こうか」
「じゃ」と彼女に短く挨拶をして、透瑠くんの手を引いてその場を去る。
「あの、大丈夫なんですか? 話の途中だったんじゃ……」
「いいの。それより早く買いに行かないとなくなっちゃうよ」
後ろで話す彼に目もくれず、早足でずんずん歩く。
なんでここにいるの? なんでいきなり現れたの?
まさか……今更謝りに来たつもりなの?
そう問い詰めたかったけど、透瑠くんがいる手前、できなかった。